○□眼鏡で知られる成田悠輔さんの卒業式祝辞の内容。一度聞くと何度も繰り返し聞きたくなる人が続出し、その関連記事も複数出るくらいの影響力を持っています。
バンタン公式YouTubeで、約66万回再生されています。(2024.10.2時点)
- スピーチの構成力と表現力
- 締めでの見事な伏線回収
- 社会人にも深く理解ができる
20分という長さを感じさせず飽きるどころか聞き入ってしまうスピーチです
【↓気になるその動画はこちら↓】
内容もそうだけど、イケボだから心地よく聞けるのよ~
成田悠輔さんのプロフィール
日本の経済学者
起業家(半熟仮想(株)代表)
米 イェール大学助教授
【HP】【X(旧Twitter)】
スピーチ内では自身のことを、「何をしているのかよくわからない人間をしている。時々暴言を吐いたりして世界中で炎上して怒られたりしている人間」と紹介する。
\成田さんの著書/
第16代ローマ皇帝「マルクス・アウレリウス」
投げられた石にとって
登っていくことがいいことでもないし
落ちていくことが悪いことでもない
第16代ローマ皇帝
約2000年前に生きたローマ皇帝の名言から始まった祝辞。
登ることが善でもないし、落ちていくことが悪でもないということをスピーチ内で一貫して伝えてます。
成田さんが自己紹介よりも先に「謎めいた言葉」と呼ぶこの名言から突然始まったスピーチ。つかみから気になって聞く姿勢になっちゃう!
哲学者として知られる、マルクス・アウレーリウス。『自省録』は今から2000年近く前に書かれた、人が生きていくための教訓が盛り込まれた一冊。
今でも読まれているのは、「どう人生を生き抜くか」「自分では抱えきれない困難にどう立ち向かうか」といった現代人にも通じるものがあるからだと思う。一度手に取ってみては。
また、2022年1月~放送されていた菅田将暉さん主演連続ドラマ『ミステリと言う勿れ』でも使われ、話題となった書籍です。
原作ともに、興味深い作品となっています♪
これからの人生で大切なこととは?
成田さん特有の表現の仕方で、これから社会人になる学生へのエールはさらに続きます。
大切なことは、成功者の話を聞いて教訓を得ることではない。
うまくいくか分からない、むしろ失敗するだろうという中でもとりあえず一歩踏み出す勇気を持つこと。
さらに、「人がやれること、いえること、考えられることの中で、すでに試してきて成功したものというのはごく一部。その裏にある、見られていない部分、触れてはいけないとされる部分はたくさん広がっている。」と続けました。
なんの保証もないそういう領域へ、どう足を一歩踏み入れるか。
「やってみよう」「実験してみよう」という精神をどう持つのか?
一歩前へ進むための、3つのキーワード
成田さんは、「人は、未知の領域へ飛び出すための方法を3つ作り出してきた」と言います。
それが、「幼児性」「異国性」「武士性」というキーワード。
①幼児性:素直に物事を見る姿勢
最近、三歳の息子は「どこからきてどこに行くのか」ということが気になる様子でよく聞かれます。
例えば、雨の日に溝を流れる水。例えば、涙。
知らないこと、興味の先を素直に知りたいと思い、解決するために聞いたり考える力が、次の一歩への背中を押してくれるような気がします。
何も知らず、わからないからこそ「なんでも聞いてみる」「なんでもやってみる」という行為につながるのでしょう。ここでいう「幼児性」とは、このようなことを言っているように思います。
②異国性:外部の視点を持つ姿勢
「国」として考えると、私は日本から一度も出たことがないのでわかりません。。。
でも、「会社」として考えると、その意味が少し理解できてきます。
会社内部で働いていると見えない問題でも、会社から一歩出てみればわかることって多くないですか?例えば、違う職場で働く友人からの発言でヒントを得ることも多いですよね。
転職してみてわかることもあるし、友人の相談にも「外部」だからこそ言えることはたくさんあります。こうして考えると、このキーワードも理解が深まります。
突き詰めると①幼児性、②異国性はダメ?
子どもや部外者になることで、外圧からのアプローチをすることができる。
だだしこれらは、「外側」から社会を変えようとするアプローチでありアウトサイダーだからできること。
野次馬と変わらないため、突き詰めるとダメなのではないか、という結論に。
そこで重要になってくるのが、内側からのアプローチ(インサイダー)の③武士性というキーワード。
③武士性:社会を内側から変える力
社会を変えるためには、インサイダー自身が内側からどう変化を作り出していくかが重要となる。それをあらわすエピソードとして、第二次世界大戦後、日本の復興をするために精を出していた時代にさかのぼる。
ニコ没
ニコ没とは第二次世界大戦後、財閥解体が行われていた時代の日本で、それを免除する特権を与えられた渋沢財閥が拒否した話。その決断をしたのが当時のトップ「渋沢敬三」であり、本人がその出来事を「ニコ没」と表現した。
「ニコニコ笑いながら没落しよう」
自分自身が解体され、返り血を浴びる、最悪の場合死に至る可能性があるような危険を、積極的に引き受け、世の中(社会や経済)を次のステージへもっていくという精神があらわれている。
渋沢 敬三
2024年7月3日から新一万円札の顔としても知られ、「近代日本経済の父」と称される渋沢栄一の孫
自身の運命を受け入れ、動物学者になる夢をあきらめ法科に進学し、弱冠19歳で会社組織に改められた渋沢同族会の初代社長に就任
第16代 日本銀行総裁、第49代大蔵大臣、国際電信電話(後のKDDI)社長、文化放送会長等を歴任し財界の世話役として活躍した人物。
「高齢者は集団自決、集団切腹しかない」発言で炎上の真意
2024年3月に米ニューヨーク・タイムズがこの発言を報じ、X上では「#キリン不買運動」というハッシュタグとともに、大炎上。キリンも批判・非難を受けたことで缶チューハイ「氷結無糖」の成田さんの広告が取り下げられるという事態が起きました。
これは、日本の少子高齢化、人口減少のテーマについて議論をしている番組内での発言。この発言は確かに過激だが、この後に続く言葉から、「武士性」に基づいた発言だということが考えられます。
「やっぱり人間って引き際が重要だと思う。物理的な切腹ではなくてもよく、社会的な切腹でもよくて、過去の功績を使って居座り続ける人が多すぎる」
これだけのスピーチができる人なので、わざと過激な言葉を使い炎上することで、このことについて考える人を増やすことを目的としたのではないか、ともとれる。
「幼児性」「異国性」「武士性」を常に体現しているようにも見えます。
↓そのときの動画がコチラ↓
私たちが参考にし、尊敬すべき人物像
私たちが参考にし、尊敬すべき存在は、絵にかいたような「成功者」なのだろうか。
もしかしたら、自分たちの成功や経験を積極的に破壊できる存在なのではないだろうか。
「自分たちが成し遂げてきたことが、なんの意味ももたないかもしれない」「意味がないどころか、害であるかもしれない」という意識をもち、自分自身を解体できる存在こそが、世の中を変えるために最も大事な存在ではないだろうか。
ここまでの解説が、はじめに伝えた言葉となり返ってきます。
これから社会人になる学生たちへ
学生たちを「投げられた石」と例えてスピーチをしめくくりました。
これから皆さんは、『登っているのか落ちているのかよくわからない状態』~略~
そんな時間をすごく長く過ごすことになると思うんですね。自分もそうですし、誰もがそうだと思うんです。ただ、そこで何かを諦めたり判断しないでいただきたいと思うんです。むしろ、何がいいことで悪いことなのか分からないような状態に耐えることこそが生きることなのではないかなと言う気がしています。
【中略】
お伝えしたかったのは、「成功するより没落しよう」「ニコニコと没落しよう」というメッセージです。
↑下線部分は、以前記事にした「ネガティブ・ケイパビリティ」の考えにもつながるのではないでしょうか。
また、この動画のコメント欄にもたくさんの意見・感想があります。
「メッセージ」とは相手に考えさせることが大事なんだな。
成田さんの世代あたりから、成功=幸せだと見る人が減ったように思う。(中略)成田さんの理念が、新しいこれからの日本人のよき風穴のように感じる。
今の卒業生にとってはよくわからないとしても、歳をとって人生迷子になったときに自分を支える背骨になるような素晴らしい話。
(※一部変更しています。)
まとめ
これから先の人生、「成功体験」よりも多く経験するのは「なんだかよくわからない時間」。「君たちの未来は明るく、輝いている」と言うのは簡単だけれど、もしもそうではないことに気が付いたときにこの話を思い出してみると、そう絶望することでもないということに気が付くことができるかもしれない。
このスピーチは、成田さんなりのエールであり、優しさなのではないでしょうか。
- 幼児性
- 異国性
- 武士性
という三つのキーワードで、どう変化をもたらすかを説明し、
投げられた石にとって
登っていくことがいいことでもないし
落ちていくことが悪いことでもない
という名言を解説した、哲学にも精通する成田さんならではのスピーチだと思います。
このスピーチはその内容もさることながら、その構成力も評価する人が多くいます。
たくさんの気づきをくれるこのスピーチに魅了される人が多いのは、必然のように感じます。